「綱のばぁぁぁぁかっ!」

 ムシャクシャして当たるように吐き出せば、階段の上を散歩をしていた犬が驚いてキャンキャンと私たちに向かって吠えた。

「淑女らしからぬ行いですね」

 綱がツンと答えて歯噛みする。

「どうせ、だれも私をお嬢様だとおもってないくせに!」

 フンとふくれっ面をすれば、綱が前に出て手を差し出した。

「さあ、怒ってないでいきますよ。表彰式と閉会式です」

 私は当然のごとく差し出された手に戸惑って、喜んで、怒っていたことなんか忘れてしまう。
 手を掴めば、子供の頃のように乱暴に引き上げる綱。驚けばいたずらっ子のように笑う。
 去年と違って熱く感じるその手のひらは、子供とは違う強さを感じる。

 私が立ち上がったのを確認すれば、綱はパッと手を離した。

「行きますよ」
「はーい」

 先を歩く綱の背を追いかける。
 日に焼けたのか、綱の耳は赤く火照ってスイカみたいだった。