SP警護と強気な華【完】
1章:運命的な出逢い

12月23日 冬の夜――


「はぁッ はぁッ」

1人の若い女は
建物がひしめき合う路地裏を
ピンクアッシュのロングヘアをなびかせ
ヒールの踵をボロボロにしながら
時折、後ろを気にしつつ息を切らして必死に逃げていた。


彼女の名は【冬月カトレア】
イヴの前日、そして自身の誕生日の夜でもあるというのに
理由もわからず誰かに追い掛けられている。
”誰か”と曖昧なのは
暗闇でその人物の顔が見えないから。

ここ最近、彼女はストーカー被害に遭っていて
たぶん同じ人物だろう。
今日は特に相手がしつこく
走って逃げないといけないほど近付いてくるのがわかった。



こんな事が起きてしまったのは、つい2か月前。
一緒に住んでいた祖父が亡くなり
独りになってしまった日から始まった。

6歳の時に両親が離婚
16歳になって母親が他界。

それ以来
祖父が”両親の代わり”として
育ててくれたのだが…
亡くなった同時期から
カトレアの生活が変わり始めた事は
本人すら気付いていない―――
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