獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
最終章

***

 私は一睡もできぬまま、息を詰めて日の出の瞬間を見つめていた。
 ……きっと、ユリアの手で手紙は既に鮮魚センターのスタッフの手に渡っているはず。
 姉様が自ら鮮魚センターに顔を出すことは稀だから、この後の展開はおそらくセンター長の采配に委ねられる。
 私がどういったルートでアンジュバーン王国に送られるかなど知るよしもないが、離宮に監禁されているうちに、なんとか助けがくるといいのだけれど……。
 こんなふうに答えの出ない堂々巡りを繰り返す私の耳に、窓の下のざわめきはまるで入ってこなかった。
「ヴィヴィアン、窓から離れろ!」
 え!? だから突然マクシミリアン様の声が空気を震わせても、即座に反応できなかった。
「これから窓を破る!」
 続く声を耳にして、弾かれたように窓の前から退いた。
 ――ガッシャーンッッ!!
 直後、窓を割ってマクシミリアン様が飛び込んでくる。ガラス片が朝日をキラキラと弾きながら窓の前に落ちていくのをスローモーションに見ていた。
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