ささやきはピーカンにこだまして
第1章『つぶやきのプロローグ』
 その1月の朝。
 8時10分発の最終スクールバスは、高等部の《しんがり隊》ご用達らしく、ぎゅうぎゅうに混んでいた。
 郊外の中高一貫校で、ふつうの子には通学手段が駅からのスクールバスしかない関係上、道路の状態で大量に遅刻組が出るうちの学校は、遅刻に関してはあまりうるさくないし。
 最終バスなら遅れてもせいぜい10分。こそこそ教室の後ろドアから入って笑われる程度ですむけれど。
 のがせば自費で公共バス利用のあげく、かるーく30分は遅れて1時間目の花形スターだ。
 なので春夏秋。だらしない子がどんどん増えて。
 冬には最終バスは120パーセントの乗車率だなんてことを、初めて体感した朝。

 いつも2本前に乗るわたしが、そんなバスに乗る羽目になったのは、ふいに筆箱のなかのチビた消しゴムのことを思い出して、コンビニに立ち寄ったら新作スイーツに目を奪われて、乗るはずのバスが出てしまったからなんだけど。
 おかげで初めて椅子に座れることにもなって。
 座っている者の特権で、コートを脱いでおけばよかったな…なんて。
 のんきに思いながら、人いきれでくもって外が見えない窓ガラスにため息をついて、暑いぃ…なんて、つぶやいていた。

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