好きだった同級生に抱き締められた
年末年始の休みを利用して実家に戻っていた私は高校のときの同級生数名と居酒屋に来ていた。
私こと大野まゆかは現在二十八歳。大学卒業後に就職した商社で毎日を無我夢中に過ごしてきたせいもあって未だに独身だった。正直あの会社はブラックなのではないかと疑っている。
「どうしたの、悩み事?」
隣の席の加藤くんが声をかけてくる。
私は何でもないといったふうに首を振った。
「ううん、そんなんじゃないよ。それより加藤くんは飲まないの?」
彼の前にあるグラスにはウーロン茶が注がれている。
他のみんなはビールやサワーといったアルコール類なのに彼だけは違っていた。まるで猿山にコアラを一匹だけ紛れ込ませたみたいにその差異がはっきりしていた。
加藤くんの銀縁メガネのレンズの奥が冷たく光った、ような気がした。
「いいんだよ、僕は下戸だし」
「そ、そうなんだ」
素っ気なく返され私は苦笑する。
どうせなら本田くんの隣に座りたかった。どうして私はろくに飲めないだけでなく話もつまらなそうな男の横にいるのだろう。
ああもう、こんなことなら来るんじゃなかった。
テーブルの向こうでクラスの人気者で姫と呼ばれていた菊池さんと談笑する本田くんを見ながら私は早くも後悔し始めていた。
私こと大野まゆかは現在二十八歳。大学卒業後に就職した商社で毎日を無我夢中に過ごしてきたせいもあって未だに独身だった。正直あの会社はブラックなのではないかと疑っている。
「どうしたの、悩み事?」
隣の席の加藤くんが声をかけてくる。
私は何でもないといったふうに首を振った。
「ううん、そんなんじゃないよ。それより加藤くんは飲まないの?」
彼の前にあるグラスにはウーロン茶が注がれている。
他のみんなはビールやサワーといったアルコール類なのに彼だけは違っていた。まるで猿山にコアラを一匹だけ紛れ込ませたみたいにその差異がはっきりしていた。
加藤くんの銀縁メガネのレンズの奥が冷たく光った、ような気がした。
「いいんだよ、僕は下戸だし」
「そ、そうなんだ」
素っ気なく返され私は苦笑する。
どうせなら本田くんの隣に座りたかった。どうして私はろくに飲めないだけでなく話もつまらなそうな男の横にいるのだろう。
ああもう、こんなことなら来るんじゃなかった。
テーブルの向こうでクラスの人気者で姫と呼ばれていた菊池さんと談笑する本田くんを見ながら私は早くも後悔し始めていた。