遠くの海が日の光を反射して目を刺激する。
足首が隠れるほど雑草で埋め尽くされた小高い丘の上に立つと、海と住宅と先ほどまでの数時間を過ごした高校の校舎を見下ろした。
ここからでは校舎の屋上を見ることはできても門の横の自転車置き場にいる人の姿を視認することまではできない。

あいつはどんな返事をしたのだろうか。

俺が言葉にできなかった想いに先を越された現実から逃げていつものこの場所に来てしまった。

地面に少しでも雑草が生えていない場所を探して寝転んだ。ここは視界を遮る木や高い草などない。
見上げた目の前にあるのは視界いっぱいの水色。その中に浮かぶ白い雲は緩やかに流れる。

「しーんごー!!」

聞き慣れた高い声が頭の上の方から聞こえる。
息を切らした美紀が雑草を踏みつけながら走ってきて、俺の頭の上で止まった。制服のスカートの中が見えそうで見えない絶妙な位置で、俺の視線を釘付けにした。

「慎吾ってば、いつの間にかいなくなっちゃだめだって! 私ずっと自転車置き場で待ってたんだけど!」

頭の上から怒りを含んだ声が降ってくる。無理矢理視線をスカートから空に戻すと「あー……わりぃ……」と呟いた。
いつも一緒に帰る約束などしていないのに美紀が勝手に俺を待っているだけだ。先に帰ったことで怒られる理由が分からなかったが俺は素直に謝った。

「次はちゃんと、帰るなら言ってからにしてよね!」

そう言って美紀は横に寝転んだ。雑草に囲まれて髪も制服も汚れるのを気にしないのか、すぐに手が触れる距離に遠慮なく来たことに戸惑う。

俺がいつどこに行くかなんて言わなくても美紀は必ず近くに来るのだ。どうしてだか美紀は俺の居場所が分かってしまう。大体はこの丘に。時には学校の屋上に。