緩やかなオレンジ

初めての彼女と結婚したのは司さんも同じだ。けれど彼はその後も私以外の女性と交際しているようだった。
今朝から出張だと言って出て行った彼の同行者が同僚ではないことを気づいていながら止めなかった。司さんとの関係に変化を起こすことが怖かった。

そうだ、あの公園が改修されるんだっけ。

慎吾とよく遊んだ公園が観光地としてリニューアルされることが決まった。地域活性が期待できると浮かれているようだけれど、私は思い出の場所が変化してしまうことにいい気はしない。
もう業者が入って土地が整備され始めているのだと聞く。今からあの丘に行っても大丈夫だろうか……。

自然と足は公園に向く。
緩やかな、けれど距離のある坂を上ったところで木がこれでもかと生い茂る森のような土地が見えた。
坂の上には砂利が敷かれた駐車場と思われるスペースがあり、車が数台止まっている。横には簡易トイレがあり、木の間から遠くに建物が見えた。

だいぶ変わってしまったな。以前の駐車場はここまで整備されていなかった。丸太を組み合わせた柵も新しく作られたようだ。

私は丸太を跨いで公園の中に入った。公園内は長い間手入れもされず放置されてきたような荒れっぷりなところは変わっていない。雑草は私の腰の高さまであり、どこに続いているかわからない道もアスファルトが土で汚れている。

まだこの辺りはまだ本格的には整備されていないんだ。ならば丘の方まで行ってみよう。

子供のころはタヌキやハクビシンが多く見られた。それらの生き物はあと少しでここに居られなくなってしまうのだろうか。

奥に行くと懐かしい丘が手つかずのまま存在していた。丘の上にブランコや滑り台があるのが見えた。

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