好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
◇涙とキスと温もりと



高校生初めての夏休みはあっという間に過ぎていった。


花火大会以来、いっくんには会っていない。

いっくんはずっと部活だったから。


というのもあるけど、わたしが避けていたから。

だって廉とは会ってたし、話してたから会おうと思えば会えた。



それでも、彼女ができたいっくんと普通に接するのは、わたしにはまだ難しい。


気持ちが追いつかない。



昨日が始業式で、今日はいよいよ文化祭。



「くるちゃん、おはよう」



ドアを開けるとすぐに、いっくんに声をかけられて驚く。

だって、会うとつらくなるから文化祭準備で早く学校へ行くって連絡したのに。



昨日もそれで顔を合わせないようにしたのに。



「……おはよう、いっくん」



一瞬固まってしまったけど、すぐに笑顔をつくる。



「くるちゃんに全然会えてないから、顔見たくなって待ち伏せしちゃった。ごめんね?」




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