今日からニセモノお姫様!
2

麗しの婚約者候補たち。







どんなに地獄な時間でも過ぎて欲しくなかった時間だが、時間は無常にも過ぎていくもので。
乙女様についてまだまだ不安がある中、とうとう今日がやって来てしまった。


それはそれは大きな鏡の前で身だしなみの最終チェックをする私は昨夜一睡もしていないこともあり顔色は最悪だった。

昨夜写真で見た乙女様。そして今鏡に映っている乙女様の姿をした私。顔色は最悪だが、高飛車そうに強気に笑えば写真のままの乙女様で私自身も驚く。

私と乙女様の違いと言えば見た目なら髪型だけだろう。私の髪は日本人らしい黒髪で肩までしかないセミロング。片や乙女様はアッシュグレーの背中まである真っ直ぐなロングだ。

乙女様は己の美しさを磨く為に髪を染めているらしい。私も髪を染めて、エクステをつけて乙女様と同じを本来なら求めるべきだが今回は時間がないので乙女様と同じ髪型のウィッグを被せられていた。

正直冬とはいえ頭に違和感しかなく気持ち悪い。

だが髪型を揃えたことで私はもう完璧に乙女様にしか見えないビジュアルに成り代わっていた。



「乙女様。準備の方はよろしいですか?」



控えめなノックの後、伊織が涼しい顔で私の部屋に入室し、私の様子を伺う。
この男も私と同じように昨夜寝ていないはずだが何故そんなにも顔色が変わらないのだろうか。

疑問しかないのだが。
私の顔色を見てよ。



「ええ」



フッと笑って余裕そうに私は返事をする。乙女様の返事は「はい」でも「うん」でもなく、「ええ」が正解だと昨夜教えられたばかりのものだ。












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