「凪紗……ご飯、食べられる?」

母は、お盆にネギがたっぷり入った月見そばのどんぶりを乗せて運びながら、ソファで放心している私をのぞき込む。

「……うん」

お盆とともに隣にやって来た母は、寄り添うように座り、「はい」と私の前にどんぶりを出した。

「……いただきます」

そばを一本ずつすすりながら、ボーッと窓の外を見る。都会の隙間に植えられた桜は散り、青々とした葉に変わっていた。

あの日から、二週間が過ぎた。

私はすっかり食が細くなり、いつも着けているパールホワイトの腕時計のベルトは、揺れるほど緩くなっている。

「……おじいちゃんのこと、お母さんから怒っておいたからね。……お母さんもごめんね。今度、皆に話してみようと思うの」

母は、あれから脱け殻のように暮らす私への接し方がわからなくなったらしい。

冬哉さんと別れたと報告した日、父と母は「こちらから八雲さんと話してみるから」と焦っていた。泣き腫らした私を見て、「しっかり凪紗を守ってあげられなくてごめん」と何度も謝られた。

しかし、私は断った。もう、そういう問題ではないと感じている。