俺様社長はハツコイ妻を溺愛したい
プロローグ



今年も残り一ヶ月を切った日のこと。

「クリスマスは、一緒に過ごせない」

人生で初めてできた彼氏は、私にクリぼっちを言い渡した。

「…どうして?」

一度決めたら事を曲げない頑固者の彼に、理由を聞いて引き止めることなんてできないことは分かっている。

「好きな人ができた。ごめん」

それは…さすがに驚いた。
好きな人がいるのではなくできたと言っているから、浮気ではないと信じたい。
そもそも彼、陽(はる)くんがそんな器用なことをできるとは思えない。

「……そっか。それなら、仕方ないね」

「本当にごめん」

いつも無邪気に笑う彼が、見たことないくらいしょぼくれている。
きっと陽くんも、いっぱい悩んだんだね。

「謝らないで。陽くんだけが悪いんじゃないでしょう。私にも悪いところは――」

「違う。あやめは悪くない! 悪いのは僕だ。本当に、ごめん」

ばっと顔を上げた彼は眉を下げて否定する。
やっぱり初めて見る泣きそうな顔の陽くんに苦笑をこぼしつつ、私は最後まで聞き分けのいい彼女を続けた。

「ありがとう、陽くん。もう謝らないで」

「あやめ……」


「じゃあ、元気でね。さようなら」


クリスマスまで残り一ヶ月。
今年は同じく予定無しの女友達と過ごそう………と思っていたんだけど。



「クリスマスは俺と過ごそう」


突如として現れた御曹司は、出会って初日、プロポーズをしてきた。

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