俺様社長はハツコイ妻を溺愛したい
5.ところがそれでもやっぱり大好きでして


「ん……蒼泉…おはよう、早いのね……」

カーテンの隙間から差し込む朝日に目を覚まされ、重たい瞼を持ち上げる。
体を横に向けるとそこには、肩肘を立て自身の頭を持ち上げて私を見つめる蒼泉がいる。

まだぼんやりとした寝起きの頭でいると、蒼泉は目を細めて愛おしそうに言うのだ。

「あやめの寝顔を見てた。 本当に可愛いなぁ、おまえは」

はっ…! 何やら朝から恥ずかしいことを言う蒼泉が変だと思ったら、私たち昨日……
ようやく覚醒してきた頭で昨日のことを思い出すと、途端にぶわっと頬が熱くなる。

あぁ、そうだ。 蒼泉は長らく離してくれなくて、やっと眠りに落ちたのは何時だったか。
ぜんぜん寝た気がしないし、身体が少し重たい。
理由は明確だが、口に出すのはいたたまれないのでなんとか誤魔化さなければ。

というか、今何時だろ。 昨日はアラームもセットする間がなくて……ぬぁぁ!恥ずかしい。

上体を起こして、寝室の時計を見やる。
時刻は……ん…? 八時…五十三分……!?

「蒼泉ーー!! 起きて、遅刻よ!」

「とっくに起きてる」

「じゃあどうして起こしてくれなかったの!」

「寝顔が可愛いから。 起こすの勿体ない」

「バカ! ばかなの! そんな呑気なこと言っていないで早く支度しなくちゃ。 とにかく早く起き――」

慌ただしく起き出す私を、蒼泉は面白そうに眺める。
どこまで呑気なんだと怒り狂うより先に、私は体の違和感に気がついた。
スースーする。 布団はやけにリアルに感触が伝わるし、まるで服を何も着ていないような…。

あぁぁぁあ!! 全裸だ、私。
何も着てないんだ。 そりゃそうだ。

「そんなに急ぐな。 身体がだるいだろう。 たまには遅刻くらいいいさ」

「ダメ! 良くない! っていうか、見ないでーー!」

蒼泉は裸体で忙しなく動き出した私を見て面白がっていたのだ。
おまけに遅刻くらいいいなんて。
いいわけない。 社長様は許されても、平社員の私はダメに決まってる。
何しろ、遅刻の理由が理由だ。
こうしちゃいられない。

私はまだ動き出さない蒼泉を放って寝室を飛び出した。

朝ごはんに食パンを一枚齧りながら、せかせかと身支度を整えていく。
お行儀が悪いのは認めます。 ですからどうか遅刻はしませんよう――!


結局、私たちは滑り込みセーフで遅刻は免れた。
のろのろと動き出した蒼泉を無視して先に家を出てしまうと、彼はそれでやっと慌てて追いかけてきた。

遅刻を恐れているというより、私との出勤のためというような顔をしていた。
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