DOLCE VITA  ~ コワモテな彼との甘い日々
ショートケーキとモンブランな日々

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空になったショーケースの掃除、売上の計算、店舗の掃き掃除などを済ませ、時計を見上げるともう七時だった。


「ももちゃん、店閉めてあがって!」

「はーい」


厨房から声をかけてきたオーナーの塩原(しおばら)さんに返事をしながら、エプロンを外す。

お店の閉店時間は午後七時。

三十分前に、予約していた最後のお客さまが来店し、今日も日持ちする焼き菓子を含め、すべての商品が売り切れた。

今朝、出がけに恐ろしい思いをしたものの、老舗ケーキ屋での仕事はいたって平穏無事に終了だ。


そこそこ大きな地方都市の中心部から、少し離れた住宅街。

駅前から徒歩三十分という中途半端な場所にある「Souvenir(スヴニール)」は、五十年の長きにわたり、多くのお客さまに愛されている洋菓子店だ。

お店の看板メニューは「ショートケーキ」と「モンブラン」。
ケーキ通なら一度は味わうべし、とマニアの間でも有名で、確実に手に入れるためには三日前までの予約が必須だった。

そんな大人気のケーキを作っているのは、御年七十歳になる塩原オーナー。

身の丈にあった商売を心がけるオーナーは、人を雇うほど店を大きくする気はさらさらなく、予定外の注文や大量の注文は予めお断りしている。
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