終わらない夢
チャプター6
Chapter6 番犬ハザード

日は傾き始めていた。そのハザードとやらは、おいおい調べていこうということで、その日は翔と別れた。
ひょっとしたら、想像より面倒ごとに首を突っ込んだのかもしれない。でも、目の前であんな顔をされては、放っておけるわけがない。
「ハザード…」
家に帰って、呟いた。目の前には父がいた。しまったと思った。父がそれを知っているかは別として、父は空気をよく読んでいる。そして、不安な気持ちはすぐに伝わる。
「…優奈」
「は、はい」
「元気でいいことだ!でも鍵はちゃんと閉めてくれな!」
「えっ、あ…はい」
わざと逸らしてくれたのだろうか。何にせよ、助かった。

その日の夜、またいつかのように縁側に座ってぼんやりしていた。あの日より、今日の星空は少し違って見えた。
「……」
ふと彼のことを思い出す。あんなとき、彼ならどう言葉をかけただろう。
鈴の中に、彼を映してみる。助けを求めるような思いを少しだけ混ぜながら、彼のことを思い描く。
「お呼びですか?」
「えっ?」
すぐ隣から、あの声が聞こえてきた。思わず退いてしまった。
「言い忘れていましたが、その鈴で実在する人を映すと、呼び出すことができるんです。本人が拒否したら、無効ですが」
「そうなんだ…」
まさか本当に来てくれるとは思わなかったから、かなり驚いている。なんだか悪いことをしたような気分。そう思わなくても、いいんだけど。
「どうされましたか。こんな時間にお呼びするなんて、よほどだと思いますが」
まあ、そうなる。私は今日あったことを話した。なんでも屋のこと、ユーカリのこと、ハザードのこと。翔のこと。全てを話した。…とても、話しやすかった。なんというか、居心地がよく感じた.
「ハザード…噂には聞いています。『神楽組』が後ろにいて、番犬とも言えるのがハザードというグループだそうです」
「どんな、人たちなの?」
「詳しくは分かりませんが、暴力、拉致、金を匂わせて様々な悪行を繰り返す…非道な者達だと」
「……」
翔の『家族を奪われた』と言う発言を思い出す。そういう人たちならば、翔のその言葉とも合う。
「あなたは…あまり深く関わるべきじゃない」
「え?」
「たとえ翔くんのためであっても、優奈さんまで身を削るような想いをする必要はないんです」
なにか、必死に止めてくれているような雰囲気だった。なぜかは分からない。
「ど、どうしたの?」
「あなたは、河津の大事な一員です。話した人も、話してない人も、そこは同じ認識です。だから…」
「咲也…顔をあげて」
とても苦しそうな顔をしていた。
「ありがとう。でも…できることは、やりたい。たとえ、私に飛び火が来てもね。だって…」

「だって、なんでも屋だから」
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