終わらない夢
チャプター7
Chapter7 記憶

「なあ、今日は遊ぼーぜ?」
「でも…」
「あんまり思い詰めてると、ウップンがたまるぞ!」
いつもの笑顔を見せる翔が、私は好き。ちょこっと憎い感じの、あの笑顔。絶対守りたいって思う。だから必死になってしまう。
「よし、咲也のとこ行こう!」
「えっ…?」

一緒に走っていると、いつの間にか見慣れたような神社への景色が出迎えてくれる。前に通った時は、こんなことになるとは思わなかった。
「咲也ー!」
「翔くん、優奈さん。こんにちは」
「はぁ……なんでここら辺のみんなは、走るのが好きなの…」
勉強とか何とかより嫌いなのは走ること。なんでわざわざ疲れなきゃいけないんだろう。私、将来大丈夫かな。
「遊びに来たぞ!」
「…そうですか。元気で何よりです」
彼はにこっと微笑んだ。機械的な雰囲気がしたのは、気のせいだろうか。
「そうだ、優奈さんがいるならちょうどいい。少し、こちらまで来ていただけますか?」
「俺は?」
「お留守番です」
「えーっ!?」
翔は不機嫌を前面に「ケチー!」と言った。こうして見ると、本当に子どもなんだけどな。
「さて」
彼が振り返って、私の目をじっと見つめた。はじめて話したあの日から、変わらない視線。
「翔くんのことですが…どこまでご存知ですか?」
「家族を亡くしたこと、その犯人らしき人物を追っていること…くらいかな」
すると、彼はまたいつかのように考えた。手を口元に置き、視線は下へ傾き、少し前屈みに。
「翔くんには、悪いですが…本当の彼をお話しします。翔くんは、あんな子どもっぽい口調をする人じゃない。本来は、13歳らしからぬ雰囲気を持つ子です」
「たまに、そんな口調になるかな」
「はい。それが本来の彼です。ですが…あなたと話す時は、わざとあんな口調を…」
たしかに、本当に子どもなのか疑う時の口調は、その場のノリで出来上がるものではない。まるで、経験をずっと積んできたかのような、あの雰囲気は。
「で、でも待って。なんでそれを私に?」
「僕たち周りは言いませんが、かなり疲弊しているのが目に見えて分かるのです。しかし、僕たちがいくら言っても聞かないもので…」
「で、私に言ってほしいと。気持ちは、分からなくはないけど」
本人がそうしたいと言うなら、そうさせてあげるべきか、それともやめさせるべきなのか。
「なんで、私にそこまで…」
彼は、なぜか鳥が集まってる翔の方を見ながらつぶやいた。
「あなたが——」
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