今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)

「お姉ちゃん、どうしたの?」

 急に方向転換した陽茉莉に、悠翔が驚いたように声を上げる。

「ちょっと用事を思い出したから、戻ろうね」
「用事って何?」

 手を引かれる悠翔が首を傾げる。
 子供の純粋さは、ときに面倒だ。

 そのときだ。背後から聞き覚えのある声がした。

「新山!」

 あー、見つかってしまった。

 陽茉莉ははあっと息を吐く。
 観念して覚悟を決めると、おもむろにそちらを振り返ったのだった。

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