今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
初めて会った幼い日には既にかなり強かったが、およそ十数年のときを経て再会したとき、陽茉莉のそれは看過できないほど強くなっていた。
有能な祓除師だった母親と同じ、もしくはそれ以上かもしれない。
祓除札を作れるようになれば、陽茉莉は自分で邪鬼が祓えるようになる。けれど、それは同時に陽茉莉がこっちの世界に足を踏み込むことを意味していた。
本人が望む望まないに関わらず、邪鬼退治の手助けをしろと詩乃を通じて命じられるだろう。そしてそれは、邪鬼に襲われやすい体質の陽茉莉が自ら危険地帯に足を踏み入れることを意味していた。
(陽茉莉に何かがあったら、俺はどうするだろう?)
ふと、そんなことを考える。
きっと、悲しみに暮れ、復讐心に燃え、最後には自分を責める。悠翔を自分に託してがむしゃらに邪鬼退治に邁進し続ける父親と同じようになる気がした。
「本当は、守ってやりたいんだよな……」