先ほどは帰って来た陽茉莉から自分以外の男──高塔の気配が強く感じられて、込み上げる嫉妬心を制御できずに陽茉莉のことを押し倒してしまった。
 涙目になってこちらを見つめる陽茉莉を見てようやく我に返り、揶揄ったかのようにその場をやり過ごした。

 ──礼也さん。

 恥じらいながら自分の名を呼ぶ陽茉莉の様子が、脳裏に甦る。
 自分で呼べと言ったにも拘わらず、想像以上の破壊力だった。たった三文字の言葉が、特別な意味を持った気がした。

 さらに、唇で触れた肌のなめらかさや鼻孔をくすぐった甘い香りまで。
 本当なら、あのまま組み敷いて優しく蕩けさせてしまいたかった。貪るようなキスをして、白い肌に余すところなく唇を這わせ、甘く鳴かせて──。

そこまで考えて、相澤はハッとする。

「やべぇ……。重症だ」

 これはもう、寝たほうがいい。そうしないと、今夜は自分が何をやらかすか、制御できる自信がない。

 相澤は溜息を吐き、首を振るとのそのそと起き上がる。
 自室の向かいにある陽茉莉の使っている部屋のドアからは、ほんのりと光が漏れていた。