今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)

 くくっと横でふたりのやり取りを聞いていた高塔が笑い出す。

「いやいや、新山ちゃん、結構押しが強いよね。礼也、ここはお前の負けだ。そもそも、ここに来るのだって散々止めたのに聞かなかったんだから、今回もだめだって言っても新山ちゃんはやると思うよ」

 よくわかっていらっしゃると、陽茉莉は高塔の言葉を聞いて口の端を上げる。

 一方の相澤は、はあっと大きな溜息をついた。

「わかった。だが、無理はするな。ひとりで絶対に離れるな。やっぱり危険だと判断したら、途中でも悠翔を連れて家に帰らせる。わかった?」
「はい」

 陽茉莉は承諾の意思を込めて、しっかりと頷く。
 お守りを持たずに外を出歩くのは、前回邪気に襲われたとき以来だ。怖くないと言えば、うそになる。

「じゃあ、行こうか」
「はい!」

 陽茉莉はショルダーバッグの中から、いつも大切にしているお守りを取り出す。ハンカチで丁寧に包むと、それを先ほど相澤が寝ていた木の根元に置いた。

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