今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
 念のためデスクの反対側に積まれた資料も確認したけれど、どこにもない。

「うそ……。相澤係長に渡した資料と逆だった?」

 陽茉莉はがっくりと項垂れる。
 今日の日中、相澤に資料の印刷を頼まれて必要分をセットして封筒に入れたのだが、どうやら一緒に印刷した別の提案先用の資料と逆に入れてしまったようだ。三つ隣の相澤の席を見たが、既に帰宅した後でデスク上は綺麗に整理されていた。

 陽茉莉はキーボードを叩いて社内スケジューラを開くと、相澤の行き先予定を確認する。

「明日はお客様のところに直行? あー、最悪……」

 これは陽茉莉の失態のせいで、お客様に大変なご迷惑をかけてしまうことになる。
 寝不足でぼんやりしていて、確認がおろそかになっていた。

「これは、届けに行くしかないよね……」

 陽茉莉は疲れた体に鞭打ってすっくと立ち上がると、とぼとぼと会社を後にした。



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