並行世界-パラレルワールド-サチside

心の穴-サチside-

「ただいま」

「おかえり」

家に帰るとだいたい家族はみんないる。うちより下校時間が早い兄弟たちと、仕事中の両親。みんなでうちを出迎えてくれる。

「学校どうだった?」

いつもお母さんが聞く。

「あいかわらず、レンがいじめられてる。でも何もしてあげられないの。」

学校であることをなんでも話せちゃううちは、親にレンがいじめられてることを言っていた。でも、それはレンには内緒。もしバレちゃったら、相談できなくなっちゃうかもしれないから。

お母さんはいつも

「レンのお母さんに言おうか?」

って言うけど、

「まだ言わないで」

っていつも止める。レンの親にバレて複雑になるともっとレンに負担がかかるかもしれないから。それに、うちが1番の親友として何とかしたいっていう気持ちもある。

そんな時うちのスマホがなった。見ると、レンの彼氏のリクからだ。こいつもなかなか厄介。

》レンを怒らせちゃった。

いつものパターン。束縛が激しくて、自己中なリク。

》何したよ?

》週末会いたいなって思って、遊ぶの誘ったんだけど、両方部活って言ってきて、午前部活なら午後遊べるじゃんって言ったら、怒らせちゃった。

》あんた、ソフトテニス部がどんだけ大変か知ってる?いくら午前部活だからって言ったって、ハード過ぎて午後はもうクタクタらしいよ。そのくらい考えてあげて。自分が悪いと思ったらすぐに謝る!

こうやってケンカするたびにLINEしてくるけど、このこともレンには内緒。もしうちが逆の立場だったら自分のせいで他人に負担かけちゃってるって思っちゃうから。

》わかった。

そうリクからの返信をみて、うちはベッドに倒れ込んだ。

毎日毎日レンのイジメを見て見ぬふりをしているような自分に嫌気がさす。起きててもそればっかり考えて、でも勇気が出ないうちがなにかしてあげられるわけでもなく、いつも帰るとすぐに寝てしまう。


────寝てから2時間くらい経っただろうか。弟のタカシが起こしに来た。

「お姉ちゃん、ご飯だって。起きて。」

「もうそんな時間か。ありがとう。すぐ行くね。」

そう言って起き上がってスマホを見た。すると1件の通知。開くとまたリクからだった。

》ねえ、俺振られたかもしれない。『もう無理。さようなら』って送られてきてから何送っても既読が付かない。

レン、とうとうやったな。レンは1ヶ月くらい前から別れたいと思っていたけど、リクの強い束縛のせいで、別れるのが怖かったらしい。逆恨みが怖いって言ってたっけ。でも別れるのを選んだのはそうとう嫌な思いしたんだろうな。

》あらら…でもリクもちゃんと自分の行動考え直した方がいいよ。今までレンがどれだけあんたに悩まされて怒って泣いてきたかわかってる?そんなのもわかってやれなかったのは彼氏として失格。

ちょっと言いすぎたかなって思ったけど、それから返信が来ることはなかった。

「はぁ、お腹すいたな!」

大きく伸びをしてから立ち上がり、リビングへと向かった。────
< 2 / 6 >

この作品をシェア

pagetop