運命の一夜を越えて
第六章 止められない心
「大丈夫」

そう耳元で何度も繰り返し彼は言い続けてくれた。

それでも、一度あふれ出したものをこらえることができず、私は彼の胸にすがるようにして泣き続けた。

「もう、いいから。大丈夫。落ち着け。大丈夫。」
渉は私の体がどんどん冷えていくことを悟ってか、私の肩を抱きながら車の方へと促した。
泣きつかれているからか、泣きすぎて呼吸が乱れているせいか、うまく歩けない私の肩をぐっと抱き寄せながら車に向かい、助手席に私をのせると渉は慌てたように運転席へと向かって来た。

「ひっ・・・ふっ・・・んっ・・・」
こんなに嗚咽しながら泣いたのは初めてかもしれない。
うまく息すらできず、どうやって今までこらえて来たのかわからなくなってしまった。

「おいで。」
車に置いてあったブランケットを私の膝にかけて、渉は自分の上着を脱ぐと私の体を包み込むようにして抱き寄せた。
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