赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
第1章

快楽の新月




──キーンコーンカーンコーン……。



「起立、礼」



放課後を告げるチャイムが校内に鳴り響き、委員長の挨拶により、帰りのホームルームが終わりを迎えた。

クラスメイト達が一斉に前方のドアに向かう中──私、雨村風花は、後方にあるドアから教室を後にする。


階段に向かう同じ2年生の生徒達とすれ違うように廊下を歩いていると、後ろから肩をポンと叩かれた。



「よっ、風花」

「あっ、千冬(ちふゆ)!」



低い声で名前を呼んできたのは、幼稚園からの幼なじみの鳥越(とりごえ)千冬。

名前の通り、小鳥のように可愛い顔と、サラサラの茶髪が特徴の男の子。

隣のクラスだけど、家が近いからよく一緒に登下校しているの。



「千冬も今から図書室に行くの?」

「うん。今日新刊の日だから」

「私も。リクエストしたの入ってるかな~?」



この学校の図書室は、毎月新月の日に新しい本が入る。

小説や漫画、専門書や図鑑など、その数なんと100冊以上!
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