石川さんのあたしの呼び方がいつの間にか「汐」になっていることに気付かない振りをして話を続けて、毎回同じように家の近くのコンビニで降ろしてもらう。


 恋人になる直前の久しぶりの甘ったるい感覚に頬が緩む自分もいれば、過去の痛い目を思い出してどこか冷静に見ている自分もいて、あたしは未だにかしこまった口調のままだった。



「じゃあ、また」

「ありがとうございました」



 黒いセダンがコンビニの駐車場から大通りに出るまで見送って、ようやくアパートへ向かう。

その先に、見覚えのある後ろ姿がコンビニの袋を提げて歩いていた。


あれから2か月近く経ってさすがに真冬にロングTシャツ1枚は寒いと自覚したのか、カーキ色のジャケットを羽織っている。

相変わらず少し歩くスピードを緩めたり立ち止まったりして上を見ている。

驚かせるつもりでほろ酔い状態のまま後を追った。