積もった雪が車のタイヤで押し固められてスケートリンクのように光っている。

むやみに走ると転びそうになると慎重に歩いていたらなかなか追いつけなかった。

結局アパートに差し掛かって、やっと声が届くくらいの距離になった。

そのまま帰ると思ったら、平野君は錆びた鉄階段を昇らずにそのままアパートを通り過ぎてしまった。



「平野君!」



 こんな夜にどこへ行くのか。

あたしの声に振り向いた平野君の目が、驚いたように大きくなっている。



「……こんばんは」

「どうしたの、家、通り過ぎてるけど」


「あぁ」と笑う平野君だったけど、足は止まったまま動かない。



「散歩です。ちょっと、この先、行ったことないなぁって思って」

「こんな時間に? 危ないよ」

「お姉さんも外出てるじゃないですか」

「でもあたしと違って君はまだ未成年だから、補導されたら大変」



 指摘を受けて、誤魔化すように隣に並ぶ。会うたびに元気がなくなっている気がする。