ときどき心が不安定になると、母親のことを夢に見る。

舞台はいつも前に家族3人で住んでいた部屋で。

そこが夕日に照らされていて、真っ赤で怖かった。

母親が出ていったときと光景が似ているけど違う。

リュックが置いてあった場所に布団が一組だけ敷いてあって、母親がそこに座って化粧をしている。



「友達が来るから、外で遊んでいてね。後で迎えに行くからね」



 布団しかない部屋に響く、上機嫌な母親の声。

何度も見ているから、これが夢だと知っているのに。




 母親がいなくなったのは、あたしのせいだ。

父はなにも言わないけど、きっとあたしのせいなんだと思う。

だって家を出ていく前の日の夜、母親がそう言っていた。



あたしが、家に出入りしている男のことを父に言わなければ。
父が夜に仕事をしているとき、いつも一人で留守番しているなんて言わなければ。

きっと『家族』という入れ物は壊れてなかった。





 ーー最悪だ。


 動悸がおさまらない。

体を起こして周りを見渡す。狭いワンルームに押し込まれた3年分の荷物。大丈夫、ここはあたしの部屋だ。
あたしだけが住んでる、あたしの城。