「平野君、おい! 大丈夫か!?」



 頬を叩く力を少しずつ強くしても平野君は起きない。

呼吸が荒くてしんどそうだ。救急車を呼んだほうがいいかもしれない。でも携帯は部屋の中だった。

平野君を靴を履かせたまま部屋に上げる。

ベッドまで持ち上げることはできなかったから、折りたたみテーブルとファンヒーターをどけて、ベッド横の床に直接寝かせる。



 このままここで死んじゃうんじゃないかと怖くて、携帯を持つ指が震える。歯もカチカチ鳴って音を立てる。嫌だ、怖い。



「……お姉さん……?」



 横で意識を失っていた平野君が目を開けた。

体を起こそうとして激しく咳き込む。

口を覆う手が骨ばっていて関節が浮き出ている。

指先もささくれだらけで見てわかるくらい乾燥している。

明るい部屋で見てはっきりわかる。平野君の顔には生気というものがまるで感じられなかった。


青白くて水分も無くて、映画で見る臨終間際の病人のほうがまだマシに見える。

あと何回か咳き込んだらそのままこと切れてしまいそうな風貌に絶句する。