余命38日、きみに明日をあげる。
第1章

死の神との出会い


薄暗い病院の廊下のベンチに一人。
 
ほんのりあたりを照らすのは、非常口を知らせるランプと、窓から入る月明かりだけ。
 
青白く、不気味なほど静かな廊下。このまま、闇に包み込まれてしまいそうになる。
 
スマホで時間を確認すると、ちょうど日付が変わったところだった。
 
11月も半ばになり、夜の冷え込みはだんだん強くなってきた。
 
冷たい空気は、俺の体温を容赦なく奪っていく。
 
それもそのはずだ。風呂上がりのスウェット姿に、足元は……裸足にサンダル。

「たのむっ……」
 
組んだ手を額につけ、祈るように呟く俺は佐久間(さくま)琉生(るい)。県立高校に通う2年生。
 
隣の家に救急車が来たのは、今から1時間ほど前。

サイレンの音がだんだん近づいてきた時からイヤな予感はしていた。

自分の部屋でじっと耳を澄ませ。隣の家で止まったことが分かった瞬間、俺は家を飛び出した。
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