政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
『もうどうなってもかまわない』
 大切な人に裏切られ、自分はもうどうなってもかまわない。自暴自棄になっていた私を、大嫌いな彼は優しく抱いた。

「俺が全部、忘れさせてやる」

 意地悪で素気なくて、彼もまた私のことなんて好きじゃなかったはず。それなのに私に触れる手は温かい。

 つらくて苦しくて、悲しみでいっぱいだった心が彼の優しさに包まれていくよう。

 幼い頃から知っていたはずなのに、私を抱く彼はまるで別人。
 優しく私を気遣い、愛しそうに見つめてくる。こんなあなたを、私は知りたくなかった。

 だって私の知っている彼は意地悪で素気なくて、絶対に好きになれないと思っていた婚約者だったのだから。


* * *

 
 私、深山(みやま)凛々子(りりこ)と久世(くぜ)零士(れいじ)が初めて出会ったのは、私たちが六歳と九歳の頃だった。

 お互いの父親は会社を経営しており、そして大学来の友人。彼は家族とともに九歳までアメリカで生活をしていたらしい。

 帰国したばかりで友達もまだいなくて、寂しい思いをしている。だから両親から私に友達になってくれと言われた。
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