――あれは二週間ぶりに残業なしで帰れた日のことだったろうか。

 疲れ果てて、カップラーメンを夕食に何気なくつけたテレビで、「日本のセレブ特集」のような深夜番組が放映されていた。

 ネット通販で成功した実業家の邸宅は、現代のベルサイユ宮殿みたいだった。私の暮らすアパートの十倍の広さはある居間も、洗練されたデザインのテーブルもソファも、週末にはプロのピアニストを招待し、演奏させるという高価なピアノも、羨ましいと思う前に感心するばかりだった。別世界の出来事だとしか思えなかった。

『なんと、お手伝いさんが二人常勤だそうですね?』

『ええ、ですが、食事だけは妻に作ってもらっています。僕にとってはどんな一流料理店よりも、彼女の手料理が一番なんですよ』

 麺をすすりつつ「すごいわねー」と独り言を呟く。

 邸宅のあるじの実業家はこの十年で、ウン億近くの資産を築き上げたのだそうだ。

 それを聞いてもまだふうんとしか思わなかったけれども、次にカメラがだだっ広い謎の部屋へと移動し、窓辺で日向ぼっこをするマンチカンが映され紹介された時には、世の中の理不尽さに割り箸を手から落とすほど動揺した。

『この子は斎藤さんの飼い猫のマロンちゃんです! まああ~、可愛いですねえ~!! ここはマロンちゃん専用のお部屋だそうですよ~!』

「ね、猫に部屋……?」

 それもエアコン完備で一年中快適に過ごせるのだそうだ。