アトス様との遭遇後の一週間は、案の定私はマリアさんにこき使われた。

 アトス様に会わせまいとしているのか、魔術師らがよく利用する会議室や、食堂や、休憩室の担当からは外されて、明朝や深夜の玄関の清掃や、聖堂のステンドグラスの拭き掃除などを押し付けられた。どれも一人でやるには手間のかかる仕事だった。

 だから、アトス様との件は偶然と誤解でしかないのに! 前世の三十年分の記憶もあって、私は自分の身の丈というものを、よ~くよく理解しているのだ。ファン心理というのもあまりない。アイドルに夢中になれるほど、精神的にも肉体的にも暇ではない。

 まあ、マリアさんはお局と言っても、あくまでこの世界の基準であって、まだ二十二歳だから仕方ないのかな。三十路超えるか結婚したら諦めもつくんだろうか。

 その日もやっと仕事を終え相部屋の寮に戻ると、もう日付が変わる寸前の深夜で、同室の同僚の三人はとっくにぐっすり眠っていた。

 はああと溜め息を吐いてメイド服を脱ぐ。

 面倒なことになっちゃったな。とにかく、もうアトス様には近づかないようにしよう。目の保養にはなるし、便利な歩く掃除機には違いないけど、あとはロクなことがないんだもの。

 お母さんの縫ってくれたネグリジェに着替え、妹が誕生日にくれたナイトキャップを被ると、音を立てないようにしてベッドに潜り込む。窓からは月の明かりが差し込んでいた。

 明日も早いので時間には気をつけなくちゃ。万が一遅刻をしようものなら、またネチネチお説教は間違いないもの。それにしても、毎日こんな調子で働いていたら、前世と同じく過労死するんじゃないかしら。

 そんな縁起でもないことを考えながらも、目を閉じると疲れているからか、すぐに眠りの波がやってきた。