アトス様はにっこりと笑い私の顎を撫でる。また、その撫で方が天下一品に気持ちよかった。

「ありがとうございます。では、早速陛下にご報告しなければ。マリカ様との縁談は断ったので安心してください。君も心の準備があるでしょうし、しばらくはこうしてデートを続けましょう。私は君をよく知っていますが、君は私をまだよく知らないでしょうから」

 とんでもないことをさらっと言われた気がしたけど、私はもうその意味を深く考えられなくなっていた。

 なぜなら、猫の胃袋は人間ほど大きくないのかもうお腹一杯だ。お腹一杯になるとやる気がなくなって眠くなる。これは猫でも人間でもそう変わりがないらしい。

 眠っちゃいけないと思うのに瞼が落ちる。あまりの眠さに座ったまま体がゆらゆらと揺れた。

 危うく床に転がりそうになる寸前に、大きな手でさっと掬い上げられる。

「……君はどこまで私を煽ってくれるんでしょうね。まったく、我ながらよく耐えていると思いますよ」

 アトス様はそう呟きながらテーブル席に向かう。そして、椅子を引いて腰掛けると、私を膝の上にそっと載せてくれた。

「今夜はゆっくり眠りなさい。部屋まで送るので心配ないですよ」

 アトス様の膝は大きくて温かくて、お日様に似たにおいがした。

 一見クールな生徒会長風なのに、実は優しい人なんだなと感じる。

 背中を何度か撫でられているうちに、私は心からリラックスしながら、また眠りの世界へと落ちていった――