呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?

第5話



 部屋に帰って来るなりイザークはベルを鳴らしてロッテを呼んだ。

「お茶を淹れてくれ」
「かしこまりました」
 ロッテは二つ返事で答えるとすぐに茶菓を運んできた。

 テーブルに置かれたのはほんのりと香る柑橘系の爽やかな香りのハーブティー。お菓子のケーキはドライフルーツやアーモンド、くるみなどが入っていて美味しそうだ。


 猫になって食べられないのが非常に悔やまれる。物欲しそうに眺めていると、シンシアの目の前に魚形のクッキーが置かれた。
「ユフェ様もどうぞ」

 ロッテは相変わらずイザークの前では献身的に振る舞っていた。いない時は会話すらなく、向こうが話しかけてくることはないしこちらが話しかけても無視される。
 動物の世話をしたくない彼女にとって、この仕事内容は相当苦痛なことだろう。この際、世話係を辞退するように勧めた方がいいのかもしれない。


『ロッテ、私の世話が嫌なら無理にしなくて良いよ。侍女長に申し出て担当から外してもらった方があなたの気が楽になれるわ』
「ん? ユフェはなんと言っているんだ?」

 平生のイザークはシンシアが何を喋っているかロッテに尋ねてこないが今日は興味があるらしい。ハーブティーを啜りながら訊いてくる。

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