期間限定恋人ごっこ【完】番外編
Another day
ねぇ誠人、私知りたいことがあるの。
これって訊いてもいいことだろうか?
別に変なことじゃないし、訊きにくいことでもないのだけれど、誠人が教えてはくれないんじゃないかと思う。
だけど、それでも気になって結局は訊いてしまうのが私で…。
『ねぇ誠人』
私の家で、部屋で、膝の上で眠りについている彼の名を呼ぶ。
前髪に触れれば、彼は「んん…」と少し反応して動いてみただけで起きる気配はない。
そんな誠人を一発で起こす方法と言えば…。
『質問に答えてくれたら1つ言うこと聞いてあげる』
そう囁けばバッと目が開いて勢いよく起き上った。
「質問てなんだよ」そう言う彼は、今まさに起きたばかりの人間だと思わせないほど意識がはっきりとしている。
こんの、ドスケベ変態野郎…。
それでも私の質問には答えてくれるようなので、そこはまぁスルーしてあげることに。
『私が初めて誠人の家に行った帰りにお兄さんに会ったでしょ?』
「兄貴?」
『そう』
あの胡散臭いイケメンホストのことよ。
「兄貴がどうした」と言う誠人に私は言った。
『あのとき耳打ちしていたけど何を話していたのかと思って』
「はぁ?」
まぁ、そう言いたくなるのも分からないこともないよ。
なんで言わなきゃなんねーんだよって感じですよね。
ただの男同士の話かもしれないのに私はずっと気になっている。
『ねぇ、教えてよ。べつにへるもんじゃないでしょ?』
「あぁ、あー…のさ」
『何?』
やっぱ教えねぇと呟いた誠人にムッと頬を膨らませて『ケチ!意地悪!変態!ドスケベ大魔王!』と喚き散らして私はキッチンの方に向かった。
それはもう怪獣のように、床が壊れるんじゃないかというくらいドスドスと足音をたてながら。