王女ちゃんの執事2『ひ・eye』焼きそばパン、リターンズ。
ひ・eye『焼きそばパン、リターンズ』

1『感ing-カンニング-』

1『感ing(カンニング)

「おまえ最近、昼休み、どこにドロンしてんの? 明日から期末試験だもんな。もしか図書館で勉強したり、しちゃってみたり?」
 木村が、焼きそばパンからそばを人の机の上にこぼしながら、ふざけたことをぬかしてきたとき、おれは実に不愉快だった。
 原因は町田だ。
 というか、やつの無神経なひと言だ。

 いつものように五十嵐の誘いにノッかって、たらたらと音楽室に向かったおれは、音楽室の前に立っていた町田にクソ真面目な顔で『お話があります』と呼び止められて。
『加藤さん、五十嵐のこと、ちゃんと考えてやってくれてますよね?』などと。
 口あんぐりな的外れ発言をぶちかまされた。
『五十嵐、加藤さんのことが好きなんですよ。知ってますよね?』
 知るか、アホ。
 おれは、おまえのせいで、ゲイだと思われてるんだっちゅーのな話。
 そんなことを言いあうほど、おれはひまじゃないので、即、教室にもどってきたわけだけども。
「木村ぁ~」
 机の上からつまみあげた焼きそばを、木村のシャツの胸ポケットに返却。
「うわ、てめ、なにしやがる」
 飛び退いた木村にまた焼きそばを落とされて、うんざり気分倍増。
「てめぇは東大いくんだもんな。せいぜい、お勉強しろや。おれは高校卒業したらニートとかなるから心配すんな。昼も屋上で寝とくし、よ」
「…………」
「…………」
 言い返してくるかと思った木村は「食欲減退……」吐き捨てると、おれの机の上にパンを投げ捨てた。
「て…め、ごら!」
「…………」
 なんだよ。どうしたよ、おい。突然シリアスモードはひきょうだぞ。


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