マネキン少女
悪気は無い
ユリカだ。どうしょう。


そう思って焦っていると、ユリカと視線が合わさった。


無表情のままの私ににこやかに笑いかけるユリカに、騒いでいた心音が安堵していく。


__もう、怒っていない?


話し掛けるべきかどうかを迷っているうちに、掃除の始まりを知らせるチャイムの音が鳴り響く。


ユリカは何処かに行ってしまった。


教室を掃除しながら、もしかしたら元に戻れるかも知れないなんて考えてしまう。


小学生時代から仲の良かった、ユリカと元に戻りたい。


そんな事を考えているうちに掃除の時間が終わり、5時間目の授業が始まる。


ユリカが気になって、授業なんて頭に入らない。


チラリチラリとユリカに視線を送ると、悲しそうな表情で窓から見える景色を眺め出した。


その横顔に見とれていると、私の視線に気付いたユリカとバッチリ目が合う。


何か言いたげな表情のユリカの唇が、動く。


しかし、何を言っているのか分からない。


「羽生さん!!」


先生に名前を呼ばれビクリと体を震わせる。


「授業中によそ見をしないように!!」


ずっと先生に視線を向けられていたから、ユリカの言おうとしていた事は分からなかった。



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