皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
――俺は昔から、劣等感の塊だった。
美しく聡明な母と、民想いのおおらかな父。そして、忠誠心を誓う多くの国民たち。
そんな華やかな皇帝一族に生まれたにも関わらず、病弱で思うように言うことを聞かない身体は、いつだって俺の心を蝕んでいた。
しかし、そんな俺を1番悩ませていたものは、病弱な身体ではない――
「ルイナード? ねぇ、ねぇ?」
書庫での読書の傍ら。左側に座ったアイリスが痺れを切らしたように、俺の肩に手をおいてを揺らしてきた。
「――ああ、すまない。見ていたのか? 本に夢中になっていた」
ハッと顔を上げると、むぅ!と膨れるアイリスの白い頬。
「もう、ずっと見てたのに。ルイナードってば、いつも本ばっかりで、無視するんだから⋯⋯」
しだいに、悲しそうに俯くエメラルドの輝きに、俺の胸は罪悪感につつまれる。
無視しているわけではない。気付けない。
でも、そう言うわけにもいかず、いつも飲み込んでいた。