皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】


ルイナード=グランティエ。

齢二十七の、グランティエ家五代目となる、このヴァルフィエ帝国の皇帝陛下だ。

そしてお父さまの殺された夜―――『俺が殺した』と。
そう宣言した私の最も憎むべき男であり、できる事なら復讐さえ望む相手でもある。

あの頃、私と同じくらいの身長の、女性かと見間違うほど華奢な美青年だった彼が――細いながらに均等のとれた筋肉質の身体に、私より頭2つぶん高い身長。

そして、“男”としての色気のあふれる、魅力的な男性になっているとは――思いもよらなかった。


「どうやら、たった十年会わないだけで婚約者の顔も忘れてしまったようだな」


婚約者―――。ドクンと心臓が跳ね上がる。

そう。ルイナードと私は、その昔幼馴染であると同時に婚約関係にあった。
彼が九歳、私から六歳の時に、彼の思いつきで婚約にいたり、父の事件の起きたその日まで、誰が見ても仲睦まじい幼いカップルだと言われて過ごしてきた。

城にいる間、最も長い時間も共に過ごし、最も信頼をおき、

そして――最も大好きな人だった⋯⋯。

だからこそ、私にとって『ルイナード』は最も思い出したくない――箱の中に秘めていた記憶だ。

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