秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
悲しい過去と真実
 約束の日曜日。相良さんは、約束通り都内にある動物園に私と恵麻を連れてきてくれた。

 電車で行きたいという恵麻の要望まで聞いてくれて、私たちは朝から三人で電車に乗ってやってきた。

 開園を待ちわびる人たちで長蛇の列ができている中、ついに開場のアナウンスが流れ、私たちも一気に進みだす人たちに続き入場ゲートをくぐる。

 人の壁がなくなり突如視界が明るくなったと同時に、ひとかたまりの風にぶわりと吹きつけられた。

 私は乱れて顔にかかる髪を片方耳にかけながら空を見上げる。

 くまなく晴れ上がった空から、冬の穏やかな日差しが降りそそいでいた。

 年の瀬ということもあって寒さが気がかりだったけれど、季節外れの陽気にも恵まれ、ニットの上にトレンチコートを着ていると暑いくらいだった。

 お気に入りのマスタード色の花柄ワンピースにボアベストを着た恵麻が、視線の先になにかを見つけて歓声を上げた。
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