偏にきみと白い春

【4】




 高城領とメアドを交換した。

友達なんかいなかったし、親と連絡をとるのもほぼ業務連絡のみだから、私のケータイはいまだにガラケーだ。高城領もちょっとビックリしてた。

 カバンのポケットにしまってあったケータイは、ほとんど新品の状態。連絡先を登録するのも久々のことで戸惑ってしまって恥ずかしい。


「じゃあ、明日バンドのメンバー紹介すっから!放課後、明けといてなー!」

「うん、わかった」


 校門を出てそんな会話をしたあと、私たちはそれぞれ反対方向へ歩き出した。送るって言って聞かない高城領には、ちょっと1人で考えたいからとなるべく言葉を選んだ。断るっていうのも意外と気を遣うんだ。

 ひとりで歩くいつもの帰り道だけれど、吸う空気はなんだか違う。

 今日は、本当にいろんなことがあった。大袈裟かもしれないけれど、世界が変わっていくのを感じたっていうのかな。こんなこと、今時映画のヒロインだって言いやしないだろうけれど。

 多分きっと、思い返したときに今日という日がトクベツな日になるんだろう。何故だかそんな予感がしてるんだ。

 ……でも、まだ一つ残ってることがある。それは私にとって最大の難関だ。


「……よし」


 一度立ち止まって深呼吸をしたあと、覚悟を決めて再び歩き出す。吸い込んだ空気は、やっぱりいつもと違う味がした。

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