【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ
「くだらないわ」

 人々が色とりどりの装いに身を包み、笑みを浮かべる夜会。その庭でシルウィンは暗い長春色の瞳に気怠さを纏わせ、自身の父が主催するパーティーの会場を見つめていた。

 今日は、この国の最西端、リグウォン領の当主が主催する夜会だ。よってこの領地の貴族たちはリグウォンの屋敷に集まり、歓談に花を咲かせている。鮮やかなドレスを纏い、くるくると踊る姿は蝶の瞬きを彷彿とさせ、それらを眺める渋い色をした男たちは蝶を捕らえんとする蜘蛛だろう。だがリグウォン領を統治する家の当主の末娘であるシルウィンは、当主の娘という立場でありながら、参列者にしらけたような瞳を向けていた。

「シルウィン。なんてことを言うんだ。今日はお前の未来の婿を見つけることが出来るかもしれない大事なパーティーだぞ。そんなことを言ってはいけない」
「はぁい」

 招待客と同じように渋い色の正装をしたシルウィンの父は、娘を窘めてから、この領地でリグウォン家より僅かに浅い家の当主の元へと話をしに行く。その背中にシルウィンは「嘘つき」と小さく言葉を投げた。そして参列者を見渡し「仮面舞踏会」と小さな声で毒づく。何故ならシルウィンにとって、今会場に見える過半数の人間が仮面をつけているように見えるからだ。
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