エリート御曹司は淫らな執愛を容赦しない~初夜に繋がる結婚事情~
5.あなたなんか捨ててあげるわ



KODO開発に入社して約四ヶ月。私の初仕事である隣県のリゾートホテルが竣工した。
引き渡し、開業まではまだもう少しかかるが、ひとつ節目を迎えた気分だ。
オープニングセレモニーの準備も始めつつ、私の毎日とても忙しく、充実している。

「愛菜さん、どうぞ」
「ありがとう」

私は目の前に置かれたサラダとラザニヤをほれぼれと眺めた。

「美味しそう」
「どうぞ、お味見を」
「もう食べてます。美味しい。本当に料理が上手ね」

サラダをひと口フォークでつまみ食いして言う。

「作るのが嫌いじゃないという程度ですよ」

優雅がワインとグラスを持ってキッチンからやってくる。私は受け取り開栓の準備をした。

「ほら、優雅」

ワイングラスを渡してふたりで乾杯する。
小林くんの一件からひと月ちょっと。あのあとすぐ、彼は本件の担当を外れた。自分から辞めたいと上司に願い出たらしい。その後、彼がどうしているか、私は知らないけれど。

一方、私と優雅の関係には少々の変化が起こっていた。
週に二・三度、仕事の後、こうして優雅の部屋にやってきて食事や軽くお酒を楽しむようになったのだ。まるで恋人同士みたいに、ふたりきりで。
以前は断っていた優雅の誘いを、私が受け入れた格好だ。ほんの数時間のおうちデート。ぐっと距離を縮めていると言っても過言ではない。
とはいえ、正式な婚約はまだである。
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