カレシとお付き合い② 森君と杏珠


 真っ黒な気持ちだった。
 泣きそうだった。
 もう、いっぱいいっぱいだった。

 込み上げる気持ちを抑えることも出来ず、変な空気にして、さらに立ち去る。
 馬鹿みたいだ。
ほんとに。
どうにも出来ず、こんな態度、何才なんだ自分。

 私、サエキさんだったらよかった。
そしたら、我儘も意地悪も、全力で治して森君とがっつり向き合ってもらえたかも。
 あー、そっか。
 でも、今でさえ、私はこんな反省して努力しても、馬鹿だし非常識だ。
 分かってても治らない。

じゃ、そんな私をそのまま見てくれないと結局だめなんじゃん!

 急ぎ足でぎゅっぎゅっと歩きながら、頭の中はぐしゃぐしゃ考えてたら、


「あんじゅ、待てよ! 」


と森君が後ろから追いかけてきた。

 な、ん、で

 そーゆー事するのよ。
 こんな姿、こんな顔してる私。
 こんなこと考えてしまっている私なのに、


「どうしたの? 」


相変わらず優しい。
 怒ればいい
 みんなと話してるのに空気悪く勝手に出てきた私に、注意すればいいじゃない。
 サエキさん相手みたいに、必死に性格治してあげようって怒ればいいのに、そんなにする意味がない?
私相手には!

 ダメだ⋯⋯ 。

 とにかく変な事言わないように、ぐっと唇をかみしめて、耐えてたら、


「機嫌直して? 」


とか言ってきた。

 なにそれ。

 機嫌直せって、馬鹿にしてるの?
 私は考えてるのよ、これでも必死に。
森君の言葉の意味。
 私に付き合ってって言った言葉。
 カノジョになって、って言ってもらった事。
 ご機嫌ななめだから、直す?
原因も解決せず、機嫌だけ直す?
 それこそ、馬鹿みたい。


「森くん、私の考えてる事なんて、ホントは興味ないんだ! 」
「えっ? 」


と心底、彼が驚いた顔をしたので、さらに心がぎゅーーーってなった。
 森君の態度に腹が立ってるのに、私が悪いみたいな、


「馬鹿だけど、馬鹿にしないでよ⋯⋯  」
「まさか、してないよ」


と森君は、静かに大人が諭すように言ったので、余計ぎゅうぎゅうーってなった。

 なんなの、機嫌とるとか諭すとか。

 ちゃんと向き合ってほしい。
 変だったら言ってほしい。
 話してほしい。

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