契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


「……え、あれって富士山?」


 びっしりと多くの建物がひしめき合う遠く向こうに見える山並みの中、日本一の山がぽこっと頭を出している。思わず独り言を呟いてしまった。

 改めて三十五階からの景色に感動していると、視界を一機のジェット機が横切っていく。

 桐生さんが勤めるJSAL(ジャパンスターエアライン)のジェット機だ。

 桐生さんは今、国際線で北京へと飛んでいる。

 一昨日の昼に北京に向かい、今日は夕方発の便で北京から戻ってくるから、夜には勤務が終わると連絡が入っていた。その後、ここに帰ってくると思われる。

 引っ越し業者への手配と勤務の関係で、私も今日やっとここに越してくることができた。

 なんだかんだ契約をしてからまだ顔を合わせてないけれど、桐生さんと私の仕事の勤務体系を考えると、この家で一緒に過ごす時間というのは実はそんなに無いのかもしれない。

 私は私で日勤と夜勤で仕事は不規則。

 桐生さんだって、国際線乗務の時には場所によっては数日日本を離れることもあるわけで、普通の会社員のようにここに毎日帰宅するというわけではない。

 そう考えれば、本当にここではルームシェアのような関係性であって、顔を合わせることもそんなにないのかも……?

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