契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


「……と、まぁ、とにかく宇佐美さんにとっても損のない条件で契約をしたいと思っているので、考えてもらえないかな?」


 改めて話を迫ると、宇佐美さんはじっと俺の目を見つめる。

 目が合って数秒、逃げるように視線をティーカップへと落とし手に伸ばした。


「今、すぐ……何かお返事することは、できません」


 そう言った彼女は、「そんな簡単に扱える内容でもないですし」と付け加え、紅茶に口をつける。

 確かに、即答できるような軽い内容ではないと、宇佐美さんに言われてハッと気付く。

 答えを急ぐ自分と比較したら、彼女のほうがよっぽど冷静なのかもしれない。


「わかりました。持ち帰ってもらって構わないです。だけど、前向きに考えてもらいたい」


 焦りを見せてはいけない。しかし、今がいい返事をもらえるかどうかの最後のチャンスだと思うと焦燥感に襲われる。

 彼女の心を動かせる、何かとどめの言葉を──。


「人助けだと思ってもらえたら」


 頭をフル回転させて出てきた自分の勝負のひと言がどうしようもなくて愕然とする。

 宇佐美さんからは、「わかりました」と話をしめくくる一言が返ってきた。


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