破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】

📕奔走! 戦闘! 料理本を求めて

「それで、何かわかったか?」

 声を潜めて尋ねるザックがすするのは、アーシェリアスの作ったトマトスープだ。

『あいつらに食わせてやれ』

 売りものの状態は良く保つべき。

 そんな頭領の思惑もあり、ザックとノアもアーシェリアスの作ったスープを味わっている。

 仕事を終えたため牢に戻されたアーシェリアスは、ザックとノアを見て小さく頷いた。

「ここにいる盗賊は三十人くらいなのと、肝心の本はここにはないって。もう売られてしまったらしいの」

「えーっ、どこの誰にっていうのはわかった?」

 ノアもまた声を小さくし、途中で「あー、おいしー」と暇そうにしている見張りの耳を誤魔化しつつ会話する。

「名前は知らないって。だけど、特徴を教えてくれたわ」

 アーシェリアスはちらりと見張りに視線をやり、こちらに気が向いてないのを確認してから再び口を開く。

「王立騎士を従えた、ツリ目で癖の強い巻き髪。歳は四十代くらいのモノクルをかけた男性だったって」

 牢へ戻る前、頭領から聞いた情報のままに伝える。

 するとザックがスプーンを口に運ぶ手を止めた。

「……ひとり、思い当たる人物がいる」

 アーシェリアスとノアが高揚して目を見開いた。

 それは誰なのかと、ふたりの双眸がザックに問いかける。

「ファーレンの宰相、マットス・クリンガーだ」

 宰相といえば、王に命ぜられて国政を補佐する者。
< 98 / 232 >

この作品をシェア

pagetop