ビニール傘を差し出したら、結婚を申し込まれました。
Chapter7☂︎*̣̩・゚。・゚
◇◆◇


 新しい年になり、ハルさんのマンションに帰ってきてから一週間ほどが経つ。

 期末試験が近いこともあり、リビングで勉強をしていると、ハルさんが帰ってきた。


夏怜(かれん)ちゃん!」


 彼はいつにもまして嬉しそうな声で私の名前を呼ぶ。リビングにやって来たハルさんに「お帰りなさい」と言うと、いきなり後ろから抱きしめられた。


「デザイン案通ったよ。まだまだ修正はかかるだろうけど、夏怜ちゃんと考えたあのデザインが本当に形になるよ」

「おお。おめでとうございます」


 私は持っていたシャーペンを机に置き、抱きしめられたままパチパチと拍手する。そして言う。離してください。
 ハルさんは私の訴えを華麗にスルーして続ける。


「商品化したら夏怜ちゃんにも一式プレゼントさせてもらうね」

「いいですよそんな高価なもの。この前もらったネックレスですら使いこなせていないのに」

「それは今だけ。社会人になったらジュエリーを付ける機会も多いと思うよ」

「そんなもんですか?」

「そんなもん。それに……」


 彼はようやく腕を緩めてくすりと笑う。


「僕の妻になったら、もっと着飾らなきゃならないかもよ?」

「つま……」

「気が早い?悪いけど君を逃がす気は微塵もないからね?」

「逃げませんよ」


 私のその言葉を聞いて、彼は満足そうにうなずいた。頭を撫でて、「勉強の邪魔してごめんね」と言い、台所へ行く。
 まったく、本気か冗談かわからない。

 彼は冷蔵庫から家政婦さんが作った料理を取り出し、ダイニングテーブルに並べる。


「テストいつ?」

「今月末から2月にかけてです」

「そっか。じゃあ明日時間ある?」


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