ビニール傘を差し出したら、結婚を申し込まれました。
Chapter6☂︎*̣̩・゚。・゚
◇◆◇


 ハルさんとの関係が恋人同士に昇格したことで変化したことは思ったよりも多くはなかった。

 もともと一緒に住んでいたし、彼からのスキンシップは付き合う前から多かった。とはいえ、前まではやはり一線引いた感じの触れ方をされていたところが、距離感が近くなったような感じはある。例えばこれまでも時々されていた額へのキスは、唇にされることが多くなった。

 あとは……


「おはよう夏怜ちゃん」

「おはようございます。……あの、私の顔に何か付いてますか?」

「いや。僕の彼女は今日も可愛いなあと思ってただけ」


 起きて部屋から出てくるなり、じっと私の顔を見つめていたので問うてみると、さらりとそんなことを言われたりするようになった。
 「可愛い」だの「好き」だの一切照れた様子もなく自然に言ってくるので、いちいち反応に困る。

 私はいつものように、照れてしまっていても顔には出ていないはずなのだが、ハルさんに関してはどれだけ無表情を装ってもバレてしまうから不思議だ。一度、どうして私がどんな感情でいるのかがわかるのかと尋ねてみたら、わずかな目の動きやまとっている雰囲気で何となくわかると言われた。意味がわからない。


「あ、今日の朝ごはんフレンチトーストなんだ。甘くて良い匂い」

「はい。お好みで蜂蜜もかけてください」

「ありがとう。いただきます」


 フレンチトーストはおしゃれな食べ物という印象が強かったが、レシピを見てみると案外簡単に作れるんだということが最近わかった。甘くて私好みの味なのでちょくちょく作っている。

 今日も上手くできたと満足しながら、ふとハルさんの方を見ると、彼の目元にくまができていることに気が付いた。



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