メリーバッドエンド
忍び寄る魔の手〜若菜side〜
平穏な日常は簡単に壊されてしまうのだと、彼に教えられた。

「嫌だ……。もう帰りたい……」

私が動くたび、ジャラジャラと体に嵌められた鎖が音を立てる。押し寄せる感情から涙を流す私を見て、彼はただ嬉しそうに微笑んでいた。そしてしゃがみ、私と目線を合わせる。

「ダメ。ずっと君は俺と一緒の運命だから」

無理やり合わせられる唇。侵入した舌によって口腔内をぐちゃぐちゃに乱され、募っていく恐怖と不快感。それでも、目の前にいる彼は私を愛するのをやめない。

こうなってしまったのは、ほんの半年前のことーーー。



都内にある小さなペットショップ「ショコラ」。ここが私、栗花落若菜(つゆりわかな)の職場だ。

小さい頃から動物が好きで、動物に関する仕事に就きたいと思っていたから、こうして毎日可愛い子犬や子猫に囲まれる仕事に就けて本当に幸せだ。

店長の健(たける)さんはとても優しい人だし、同僚や先輩とも一緒にご飯を食べに行ったりする仲で、人間関係で悩みなんてない。おまけに、ペットショップ「ショコラ」の制服は動きやすくて可愛いし!ここで働けて毎日とっても幸せだ。
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