今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
第五章 懐妊とプロポーズ
言われた通り、彼の家にやってきたものの。

広々としたリビングで、大きな革のソファに腰を下ろし、なんとなく落ち着かない時間を過ごす。

中央にはローテーブルとソファ。ソファの背面は一面窓で、正面には壁掛けタイプの大型テレビ。細かなものは備え付けのラックに収納されているようで、綺麗に片付いている。

掃除もきちんと行き届いていて、几帳面さがうかがえた。

唯一、扉のついていないラックには、雑誌が並んでいる。医療情報誌に経済情報誌、それから車の雑誌――そういえば趣味はドライブだと言っていたっけ。

写真集なんかも並んでいる。海外の風景写真が好きみたいだ。

一番端に置かれていたのは、彼を取材した女性誌『ブリリアントウーマン』。一緒に並べてくれているのがなんだかうれしかった。

雑誌の背表紙をざっと眺めたあと、飲み物でももらおうかなぁとキッチンに向かったところで、さっき彼から渡された缶のカフェラテを思い出した。

カフェラテは外気で冷やされ少し冷たい。グラスに開けてそのまま飲もうとしたところで、自分が寒さを感じていないことに気づいた。来たばかりなのに部屋が暖かい。

そういえば、前回訪れたときに、携帯端末からエアコンの温度を調整していたっけ。

私がここに到着するのを見計らって、部屋を暖めておいてくれたのかもしれない。
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